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『チョコレートコスモス』 [本のススメ]


チョコレートコスモス (角川文庫)

チョコレートコスモス (角川文庫)

  • 作者: 恩田 陸
  • 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
  • 発売日: 2011/06/23
  • メディア: 文庫



今日も本の話になります。
今回は恩田陸さんの『チョコレートコスモス』を読了しました。
本の帯に「芝居の幕が上がる。舞台で何かが起こる。」と書いてあったことがきっかけで、
読んでみることにしました。恩田陸さんの著書にはもともと興味をもっていましたし、
(本の帯にあった)<傑作演劇小説>という言葉に惹かれたのもあります。

演劇好きには是非とも読んでもらいたい一冊です。
すごく面白かったですね。ある舞台のオーディションを描いた物語なのですが、
まさに小説版『ガラスの仮面』といった雰囲気がありました。
オーディションを最初から最後まで描いたというわけではなく、
主要人物がいかにそのオーディションに集ったかということが最初に書かれています。
演出家も何人か登場していますが、まるでモデルとなった人物がいるかのような気持ちになりました。
この人は~~~さんに、あの人は・・・・さんに似ているなあ、と考えながら読んでいくと、
また違った面白さを感じられました。いいですね、面白いです。

私自身、戯曲にはそこまで詳しくないので、戯曲の勉強も少しさせてもらいました。
今回は『真夏の夜の夢』を現代風に作り変えた脚本の台詞も出てきたりもしましたが、
オーディションでは『開いた窓』と『欲望という名の電車』の戯曲が使われていました。
両作品とも全く知らなかったので感心しながら読んでいきました。
『欲望の~』は名前だけ聞いたことがありますし、日本でも何度か上演されていますよね。
たった一場面のみの芝居をただ読むだけで非常に興味深く思えてしまったので、
今度戯曲そのものを読んでみようかと思ったりも。
『開いた窓』は聞いたことも目にしたこともない作品でした。
ブラックユーモア?と思われる戯曲であっという間に話は終わります。
さらに「おおー!」と関心したのが戯曲をどう味付けしていくかということーつまり、「演出」です。
戯曲からいくつも「演出」や「表現」が生まれることに芸術の奥深さをひしひしと実感させられました。
オーディションでは候補者によって戯曲の演出が変化していくし、
候補者の演技も違っているので、非常に面白いと何度も思いながら読んでいました。

私が好きな登場人物は『ガラスの仮面』では亜弓さんのポジションであろう東響子。
芸能一家で育ち、華やかのオーラや才能、実力をもった天才といわれている女性です。
客観的に物事を見られる冷静さや豊かな発想力、1つの役柄への探究心には
本当に色々と学ばされますし、憧れますね。彼女は本当に頭がいい人物だなあと思います。
彼女のブランチ(『欲望の~』の女主人公)を私も実際に観てみたいですね。
どれほど凄い演技だったのだろう?どのようなブランチだったのだろう?…と。
架空の人物であるとは分かっていますが、そのように考えてしまうぐらい、
文章からくる迫力が凄かったです。女優の凄さというものを感じました。

北島マヤのポジションであろう人物、佐々木飛鳥。
彼女は人の表情や動きをそのまま再現できるような才能を持った人ではありますが、
人を分析することはできても人を「見てはいない」。
そのように友人から言われたと書かれてありましたが、
その言葉を一度では理解することができず、何度も飛鳥の行動についての文章を読んでみました。
多分ですが…、人の表情や動きからそっくりそのまま真似は出来ても
感情は実際にその人の気持ちに立って考えてみなければ表現できません。
人の真似を試みるようになった彼女は架空の人物でも実在の人物でもそっくりさんにはなれます。
ただ、人の感情の結果を見ていないんですね。
研究に没頭しすぎて、どうしてその行動に出たのかという理由を考えていないんですよね。
だから「感情」がおろそかになりがちになってしまいます。
それだけではなく、もともと彼女は自分の感情をあまり表に出ないタイプの女性です。
そのようにあれこれ考えていくうちに、彼女の抱える問題が見えてきたような気がしました。
…間違っていそうだから、あえてここでは書きませんが(苦笑)。

演劇好きには是非一度読んでいただきたい一冊です。
本当に演劇の面白さを実感できるのではないかと思います。実際に私がそうでした。
舞台っていいな、と改めて感じ、また舞台鑑賞をしなければ!という思いになりました。

ではでは。
コメント(4) 

コメント 4

にゃんとむ

先ほど送信させていただいたコメントに名前を入れ忘れました。
失礼しました。

名前が入っていなかったから、もしかしてコメントも消えてしまって
いるかもしれません・・・
by にゃんとむ (2011-07-23 00:22) 

marine

にゃんとむさん、こんにちは。
残念なことに最初に書いて下さったであろうコメントは消えてしまったようです。
非常に残念でなりません!
記事を読んで下さってありがとうございます。
by marine (2011-07-23 06:14) 

にゃんとむ

やはり消えていたのですね・・・不注意でした。
面白いコメントではありませんが、あらためて書かせていただきます。


marineさまの「演劇好きには是非とも読んでもらいたい一冊」とのお言葉に
魅かれ、図書館で借りてきました。
ページをめくる度、役者が動き、語り、照明が当たる様を脳内で“観る”のは、
とても楽しい体験でした。

ゼロ公演と中谷劇場の雰囲気、金の林檎のくだり、「開いた窓」のオーディション、
CUBEの客席等々・・・
響子や葉月の演技も実際に観ているかのように想像できて、芝居を「感じる」
体験でした。


ただ、飛鳥の演技は私の想像を越えてしまって、明確に映像化する事ができま
せんでした。
今までそれなりに舞台を観て、凄い演技に魅了されたことも何度もありましたが、
飛鳥のような役者の演技には出会っていなかったからなのでしょうね。


図書館で借りたものの、きっとこれから何度も読み返すのは間違いないので、
結局購入しました。連載中の続編も楽しみですね♪

良い本をご紹介くださりありがとうございました。
これからもブログを読ませていただくことを楽しみにしております。
by にゃんとむ (2011-07-23 07:11) 

marine

にゃんとむさん、こんにちは。
もう一度書いていただきまして、誠にありがとうございました
『チョコレートコスモス』を読まれたのですね。
確かに飛鳥の演技は想像しにくいものではございますが、
「こんな感じかなあ」ともやもやとした感じで脳内に思い描いたら、
なんとなく納得することができました。
とりあえず観る者を惹きつける何かがあるんだなといったふうに。
本当に続編も楽しみですよね。色々な立場の人間が出てきますから、
彼らがそれぞれどのような道を進んでいくのか、よく空想してしまいます(笑)。

今は『ダ・ヴィンチの白鳥たち』という本を読んでます、歴史物ですね。
チェーザレ・ボルジアが生きていた頃を舞台にした作品で、
『ブーリン家の姉妹』を思わせるような展開です。ドキドキハラハラしながら読んでいます。
もしよろしければ、こちらの本も是非是非。


by marine (2011-07-24 00:18) 

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