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La Femme en blanc [本のススメ]


白衣の女 (上) (岩波文庫)

白衣の女 (上) (岩波文庫)

  • 作者: ウィルキー・コリンズ
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1996/03/18
  • メディア: 文庫



先日ようやく念願の『白衣の女』を読了しました。
留学中から「帰国後に読みたい」とずっと思っていたんですよね。
だから、嬉しいですね。「ああ、よかった~!」と喜びの舞をしてしまいそうな…(笑)。

以前にm○x○日記にも書いたことなので、
再び同じことを書くのが面倒だと思う私はそのまま転載させていただきます。
ところどころ編集して、全く同じといったことにはならないようにしますが。

今日ようやく『白衣の女』を読了しました。
上中下巻の3冊から成る岩波文庫本を1日サボった日(他の本を読んだの!)を 入れて、
1週間で読み終えたのは奇跡のようです。 (基本的に外国文学を読むのは遅いのですよ。)
英国ミステリーの名作と称される以上の価値のある文学作品でした。
勧善懲悪の内容であるだけでなく心理的機微もきちんと描かれていて、
心理ゲームのような小説が好きな私にとってうってつけの本だったといえます。
私はあまりハリウッドで観られるような「正義!悪!」といったはっきりした善悪を描かれた作品が
好きではないんですね。ですから、この作品にはそういうところが見られなくて好感をもちました。
さすがイギリス文学だなあと思ったり。イギリス文学の高尚といえるところが感じられる作品でした。
さて、話を元に戻して…。このミステリーは悪人という位置づけの登場人物の側からの話も読めるので、
人間の本質について興味を持って読書を親しんでいる方にもお勧めです。
ある登場人物から観た物語ではなく(語り手が1人に限定されているという意味です)、
様々な人達によって語られる話から見えてくる事件、という構成なので、
ただのミステリーではありません。 考え抜かれた物語に隠された(事件の)本質に
私が魅了されてしまったといっても過言ではないでしょう。
映画化やミュージカル化されるだけのことはあるなと思います。名作は名作と言われるだけの理由や
読者を魅了する何かを持ち合わせているということを再確認しました。
ただ明るい勧善懲悪ではなく、大人のための…
いや、大人にしか分からない良さを備えた魅力あるミステリーでした。
今の日本人作家にこれだけの作品を作りだせる人はいるのであろうか、
と私には思えてしまうぐらいでしたね。ああ、読んで正解でした。
ここからは内容を知っている人しか通じないことになりますが、
あの登場人物の中ではやはりマリアンが好きでした。大悪党の心をもひきつける知性に憧れますね。
いくら外見がそこまで優れていなくても、内面がそれだけ美しいのであれば美人といってもいいのでは?
マリアンとローラのどちらになりたいか?と聞かれたら、迷わず「マリアン!」と答えるでしょうね。むふ。
また、最初草食系男子のようだったハートライトがアメリカで鍛えられ、
帰国後素晴らしい男性になっていたのもあり、
こんな男性の奥さんになれたローラは幸せものだなと思います。
ペスカ教授も最初はただの陽気なイタリア人としか見ていなかったけれど、
ラストのほうでハートライトの前で見せた彼の真実の姿に
「人は見かけによらぬものだ」と実感しました。
ペスカ氏と同じイタリア人のフォスコ伯爵はハツカネズミや鳥をこよなく愛する人で、
鳥に話しかけるところが『魔笛』のパパゲーノに似ているなあと思いました。
大悪党の墓となったペール・ラ・シェーズ墓地はパリで1番大きなところです。
まるで迷路のようなつくりになっていて有名人の墓を探すだけでも大変な場所です。
私はその墓地よりも小規模なモンマルトル墓地に赴きましたが、
思わず体がふらついてしまうほど広くてつくりが複雑なので何度も迷いました。
そんなところに葬られた大悪党の墓がそんな墓地にあることは
探しても見つからないだけで本当に存在するのではないだろうかと思えてしまうほど。
だから、真実性というものもちょっと感じられて、
ハートライトが前置きとして書いていた「記録」という言葉を本当に信じてしまいそうになりました。
また、よくできた物語だ、とも。名作として絶賛されていることに心から納得できます。
「百聞は一見にしかず」という言葉が存在しますが、本に関してはその百聞も重要だと実感します。


魔笛 [DVD]

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  • 出版社/メーカー: ショウゲート
  • メディア: DVD



今はちょうど『魔笛』を見ています。
時代を第一次世界大戦頃と位置づけた現代版ですので、ファンタジーに思えないところもあります。
ま、ファンタジーなんですけどね!
夜の女王が戦車に乗って登場するところは思わず目が点になりました。
以前鑑賞した『キャメロット』と同じ感覚で見ていました。
突っ込みながら楽しく見させていただいてます。
『魔笛』は「夫婦による娘の取り合い」だと思うのですが、いかがでしょう?
母親である夜の女王は娘が父親のザラストロにとられて怒りくるっています。
そこで勇敢なタミーノを発見し、彼に依頼して娘を取り返してもらうよう依頼します。
一方の意見(この場合、母親側)しか聞かされていないタミーノは正義感をもって
娘をザラストロの元から救おうと立ち上がり、パパゲーノと共にザラストロの館へ行きます。
そして、ザラストロの話をきちんと聞いたタミーノは「もしかして父親側のほうが正しいこと言ってる?」
ということを感じ始め、結局ザラストロ側の人間になります。
それを知って怒り狂った母親は…!というふうに展開されていくわけです。
最初死にそうになっていたタミーノを救ったのは夜の女王の部下達なので、
ザラストロ側と夜の女王側のどちらが善もしくは悪なのか決定付けるのは難しいですよね。
他にもザラストロの教団の考えがどのようなものかいまいち歌詞だけだと分かりにくいですしね。
(教団とフリーメイソンの考えが一致しているという説も存在するようですね。)
ま、あのラストで「夜の女王側が悪だったのよね?」と観客が思うのではないでしょうか、多分。
…私自身、ザラストロ側の方が社会的善に則った考え方をしているんじゃないかと思っていますが。
とにかく!映画での夜の女王のアリアが素晴らしいです。
例の「復讐の炎は地獄のようにわが心に燃え」のアリアです。あれは迫力満点!でした。凄かった!

そんなわけで…今日はこれにて。

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コメント 2

にゃんとむ

「白衣の女」についてのご感想、頷きながら拝読させていただきました。
私も聡明なマリアンに魅かれます。
最初に彼女の外見についてことさら強調しているのは、彼女の聡明さを
際立たせるためのようにも思いました。

ミュージカル版は原作に比してキャラクターが薄く、日本版公演は必ずしも
良作と言えるものではなかったと思います。
特にフォスコの闇の部分が浅く、とても残念だったことを記憶しています。
やはり、あの小説の魅力を短時間にまとめるのは難しいですね。


話は変わりますが・・・
最近は本の購入をAmazonに頼りがちですが、たまに大型書店へ行った時
に、本作を含めて名作揃いの岩波文庫がズラッと棚に並んでいるのを見ると、
心が踊ります。
今週から岩波文庫の「レ・ミゼラブル」再読を始めました。


このブログでの、優れた作品のご紹介をこれからも楽しみにしています。
by にゃんとむ (2011-07-01 23:28) 

marine

にゃんとむさん、こんにちは。
そうですね、ミュージカルは時間が限られていますから、
原作の深みそのものを出しつくすことが難しいんでしょうね。
どこか妥協しなければいけない点が出てくることが残念ですよね。
日本に舞台を変えた昼ドラも時々拝見していましたが、
そちらも原作のように心から引き込まれることがありませんでした。
それほど原作が完璧だからこそ美しいミステリーであることの証なんでしょうね。

私も最初のマリアンの外見についてのハートライトさんの記述は
彼女の内面からの美しさを際立たせるためだったと思います。
細かい点においても作者の意図のようなものを感じさせますね。

そうですね~岩波文庫の並びは心にグッとくるものがありますね。
最近いくつかの文庫でも名作を読めるようにはなってきていますが、
やはり岩波文庫が1番ですよね。
岩波文庫があまり揃っていない本屋に行くと、残念な気持ちになります。

私はamazonでは本の買い物をしないほうですね。
自分の目で見て本を選びたいという思いがあるのもあります。
本との出会いも「一期一会」だなあと実感することが多いからでしょうか。
という私も欲しい本がなかったらいつもamazonで注文します。
マーケット・プレイスのお世話になっています。

レミゼの再読を始められたのですね。
あの世界観を堪能してくださいね。
by marine (2011-07-02 00:13) 

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