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『白鳥の湖』に対する思い入れ [marine的コラム]

皆様、こんにちは。
今週から一気に寒くなりましたが、風邪などにはお気をつけ下さい。

先日、牧阿佐美バレエ団の『白鳥の湖』を鑑賞してきました。
その感想を交えながら、私の『白鳥の湖』に対する思い入れを書いていければと思います。
…ちなみにチャイコフスキー三大バレエ(白鳥~・くるみ割り人形・眠りの森の美女)のなかで
『白鳥の湖』は3番目に好きです。(1番はやはり『眠りの森の美女』です。大好きです。)

『白鳥の湖』はジークフリードの駄目な男っぷりが大いに発揮されるストーリーだと思います。
顔がそっくりであるというところでオデットとオディールを一緒にしてしまうし、
(性格が正反対だし、白鳥と黒鳥という違いもある!)
お母様である王妃様への態度はまるでマザコンのようだし…。
いわゆる「草食男子」のような王子だなあとジークフリートに対して思います。
オデットはそんな王子をすぐに許してしまうので、
ジークフリートとオデットは愛し合うことが出来るんだろうなと勝手に解釈しています。
私からしてみれば、突っ込みどころ満載のラブストーリーなんですけど、
そういう演目をついつい見てしまうのは『白鳥の湖』にこそバレエの真髄があるからでしょう。
2幕のバレエ・ブランと呼ばれる幻想的な場面。
1幕のマイムがもたらす演劇的な面白さ。(3幕より全ての発端である1幕が物語として興味深い!)
3幕のディベルディスマンも各国のダンスの魅力がつまっている良さが感じられるシーン。
4幕の観客それぞれの「夢」を届ける場面。(「夢」=「永遠の愛」という解釈で考えていただけたら。)
また、バレエでしか表現できない豪華さもはかなさも兼ね備えている演目でもあります。
『白鳥の湖』には2通りのラストがあります。
1つは「永遠の愛を得るための悲劇」。
王子とオデットが(オデットら白鳥たちのボスこと)ロットバルトのせいで現世では結ばれないから
永遠の世界で一緒になろうという話で、大体のバレエ団がこちらのバージョンで上演しています。
まあ、王子とオデットの2人にとってハッピーエンドかもしれませんが、
客観的な目で見れば「悲劇」だろうというわけで、あえて「悲劇」といわせていただきます。
こちらはラシーヌの戯曲を思い出させますね。物語自体はドイツが舞台であるはずですが、
この内容はラシーヌっぽいと以前から感じています。
もう1つは「愛の勝利で終わりハッピーエンド」。
ソ連で初めて上演されたバージョンですが(ソ連の考え方として悲劇は駄目だったらしい)、
オデットへの深い愛をもって王子はロットバルトを夜が明けないうちに殺し、
朝になってもオデットを始めとする娘たちは白鳥に変身せずに済んだというエンディング。
こちらはハリウッド的なものを感じさせます。「勧善懲悪」のような結末です。
そういうことを考えていくと、4幕は本当に重要な場面で、
主役を踊るダンサーは4幕での解釈を深く考えないと駄目なんだろうなと思います。
まあ、ほとんどのバレエ団ではあまり重要視されていないところではありますけどね。
演劇的な面白さではなく華やかなバレエを期待する観客がやはり多いからなんだろうなと
推測していますが、実際はどうなんでしょうね?
私自身は演劇的な面白さを求めてバレエを見ている人間なので、物語にも凄く重要視します。
(華やかなバレエ自体はずっとバレエを踊ったり観てきた人間によっては興味ない事柄なんですよ。)
(私の場合、そういう方向で見てしまうとダンサー1人1人の踊りを注意深く見ることになるんです。)

物語として1番面白くて好きだなあと思うのはヌレエフ版。
こちらのバージョンは王子とロットバルトの物語なんですよ。
オデットやオディールは脇役です、脇役。
王子の家庭教師かつ悪者であるロットバルトは王子を大切に想うあまり、
王子の恋を邪魔しようと様々な策略を練ります。最後はロットバルトの笑みで終わります。
…「悪の魅力」を堪能できる作品で、3幕のグラン・パ・ド・ドゥは王子、オディール・ロットバルトの
「パ・ド・トロワ」に大変身するのです。(ロットバルトにもヴァリエーションがあるのです!!)
このロットバルトを演じるダンサーもプリンシパル級の人がほとんどで、
ダンディーな男っぷりを披露しています。


パリ・オペラ座バレエ団 白鳥の湖(全4幕) [DVD]

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こちら、ヌレエフ版『白鳥の湖』はDVDも日本で発売されています。
興味をお持ちの方はぜひご覧になってくださいね。


隔週刊バレエDVDコレクション 2011年 10/11号[分冊百科]

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  • 出版社/メーカー: デアゴスティーニ・ジャパン
  • 発売日: 2011/09/13
  • メディア: 雑誌



そういえば、デアゴスティーニの新シリーズ「バレエDVDコレクション」の第1弾が
ヌレエフ版『白鳥の湖』でした。こちらはマイムの意味が字幕で出てきたり、
冊子に詳しいバレエの説明書きもあるので、バレエ初心者の方にはお勧めです。
(ついでに第3弾もヌレエフ版『眠りの森の美女』。こちらも是非是非。)

一度観てみたいのはノイマイヤー版。タイトルも『幻想・「白鳥の湖」のように』。
舞台はルートヴィヒ二世の治世下バイエルン。
王の回想という形で物語が始まるようですが、ルートヴィヒの妄想癖をうまく描いています。
妄想癖といいますか、ルートヴィヒがだんだん現実と幻想の境目が分からなくなってくるほどの
夢想家というべきか…いまいち分かりませんが。ま、夢想家のほうが正しいとは思います。
(これが植田景子女史の『ルートヴィヒ』の着想につながったと私は予測。)
ノイマイヤー版『眠りの森の美女』が本当に好きなので、一度生で観たい作品です。

さて、先日観た『白鳥の湖』は斬新な演出が1つもない伝統的な物語に則った舞台でした。
オデット・オディール役は青山季可さん、ジークフリート役は京當侑一籠(きょうとうゆういちろう)さん。
青山さんは今や牧阿佐美バレエ団の代表的なプリンシパルダンサーですので、
東京でしかなかなか観られない彼女の踊りを観たくてチケットをとったようなものでした。

日本のバレエ団では東京バレエ団の舞台がほとんどだった私は、
牧の華やかで上品な舞台装置や衣裳に幕が開いた瞬間に一目惚れしちゃいました。
思わずフランドル絵画を連想させる舞台装置に品のある綺麗な衣裳の数々…。
これぞクラシックバレエ!…と思わせるものがありました。
『白鳥の湖』でここまで素晴らしい装置や衣裳は国内バレエ団の中でも牧さんでしか
見られないのではないでしょうか。それほどまでに素晴らしく、
さすが英国美術家に依頼しただけのものはあったなあと本当に感激しました。
結末は勿論プティパ版(初演)に倣ってか「悲劇」バージョンでした。
ダンサーのレベルも凄く高いです。コールドで足音が滅多に聞こえないことに凄いなあと思いました。
ま、1幕のパ・ド・トロワはちょっと不満が残るものでしたし、
2幕の二羽の踊り(大きな白鳥の方)もよかったとはいえない出来でした。
その分、2幕の四羽の白鳥でのぴったりと息があった踊りには感激しましたし、
米澤真弓さんというダンサーさんの踊りが本当に素敵だなあと「発見」もできました。
バレエ雑誌で以前『リーズの結婚』の「アラン」を演じている姿を見て興味を持っていた
清瀧千晴さんの踊りを見られたのも良かったです。(パ・ド・トロワでの踊り、よかったです!)
主役の青山さんは本当に素晴らしいダンサーさんです。
足音が全くしないし、役作りもよかったと思います。主役のオーラも凄かったです。
ただ背中がかたいのか時々ポーズが綺麗だと思えないことがありました。
あと、本当に細い方なのですが、あまりにも細すぎてかえって美しく見えませんし、
老けているように見えました。本当にプリンシパルダンサーの中では若手の方なのにも関わらず。
もう少し肉をつけたほうがいいかなと思います。
あと、オディールのときの32回転にはヒヤヒヤさせられました。
やわらかいポアントで32回も回れること自体すごいなあと思いましたが、ちょっと怖かったですね。
(細すぎることによる)体力のなさも大きな原因だと思いますが、
アントゥールナンでのアンドゥオールがうまくできていないことで
かえってグランフェッテが不安定になってしまうんじゃないかなあと推測しています。
フェッテは一度コツを掴むとひょいひょい回れてしまうものなので、直すことは難しいでしょうが。
私自身フェッテ系が大嫌いだった人間だったので、確信はしていませんけどね。
京當さんのジークフリートはまさに王子様でした。ダンスール・ノーブルのダンサーで、
ただ立っているだけでも王子様オーラを客席に発することが出来る!…これは素晴らしいことです。
(ダンスール・ノーブル(Danseur Noble)は仏語で貴族的なダンサーという意味になります。)
技術的なものをいえばまだまだ成長できるなと思わせるものがありましたが、
王子様を演じるには技術以上に王子様オーラや見た目が重要だと考えているのでいいんです!
むしろ彼にはこのままでいてください、という気持ちでいっぱいです。
…今回の鑑賞で、これからも牧さんの舞台を観に行こうと改めて思いました。
(牧さんのバレエを観るのは『三銃士』以来。志賀美佐枝さんのコンスタンスが印象的でした。)

今日はこれぐらいで。
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